建設コンサルタントが切り拓く 北海道の未来
交通からみた未来の姿2050
JCCA一般社団法人 建設コンサルタンツ協会北海道支部

一般国道12号 新空知大橋

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一般国道334号 知床峠

早朝の知床峠( © kkawamura クリエイティブ・コモンズ・
ライセンス(表示4.0 国際))を改変して作成
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

はじめに

一般社団法人 建設コンサルタンツ協会
北海道支部
支部長 佐藤 謙二

我が国の国土面積の22%を占める北海道は、その広大な大地を活かし、地域ごとに特色ある産業が展開され、国内最大の食料供給基地として大変重要な役割を担っています。また、積雪寒冷地という特色ある自然環境は、世界的に見ても観光資源としてのポテンシャルが高く、近年はインバウンド観光を含む来道者からの評価も高まってきています。
一方で、広域分散で積雪寒冷な北海道では、人口減少が全国よりもおおよそ10年早く進んでおり、地域の経済や暮らしなど様々な分野への悪い影響が懸念されています。また、広域分散型の地域構造ゆえに、生活や経済活動の基盤として必要であるはずの社会資本の整備状況は、全国と比較し立ち遅れているのが実状です。北海道の強みである「食」と「観光」は、『第8期北海道総合開発計画(平成28年3月)』において戦略的産業として位置づけられ、それらを主に担う地域は「生産空間」と定義されました。しかし、この北海道の強みを発揮する「生産空間」も、こうした厳しい環境の中では、明確な北海道の未来の姿を描いた上で、この地域を守る強い意思を持ち続けなければ消滅してしまう危険性すらあるのです。さらに、カーボンニュートラルの実現に向けた取組や、北海道の顔となり道民の快適な生活を支える都市空間の創造、北海道にふさわしい産業の育成、激甚化・頻発化する自然災害への対応、不安定な世界情勢から派生する様々なリスクへの対応など、北海道の持続可能な未来の創造に向けては取り組むべき多くの課題があると認識しています。
 このような危機感のもと、(一社)建設コンサルタンツ協会北海道支部では、北海道に根ざした専門技術者集団として、その課題解決のため政策提言をまとめることとしました。こうした提言活動は、我々がこれまで以上に社会貢献に努めるという意味合いだけでなく、建設コンサルタントの社会的認知度を高めるとともに、その成果は当協会北海道支部内においても未来に向けた世代共通の指針になると考えています。
 この提言書では2050年をターゲットに、『建設コンサルタントが切り拓く 北海道の未来 ~交通からみた未来の姿2050~』と題して「交通」の切り口で「エネルギー」「くらし」「活力」「安全・安心」の4つのカテゴリーで提言をまとめました。今後協会としては、これらの提言の実現に向けて継続的な取組を進めていきたいと考えております。
 この提言書が、北海道の未来に向けた各方面での取組の一助になれば幸いであります。
令和5年4月
一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 北海道支部
支部長 佐藤 謙二

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エンジニアが持つ未来への課題 建設コンサルタントが
未来に向けて取り組むミッション

北海道の未来には様々な課題があります。しかし一方で、北海道には多くの強みもあります。私たち建設コンサルタントは、課題を解決し強みを活かすために取り組むミッションを以下のように設定しました。

1北海道が抱える課題

1人口減少

人口減少は日本全体に共通する問題ですが、広大な生産空間を抱える北海道にとっては、とりわけ大きな問題といえます。人口減少による地域の衰退は、地域の生活基盤を弱体化し、生産空間への居住を難しくするなど、負のスパイラルを生み出します。人口減少を抑制しつつ、また人口が減少する中でいかに地域振興を進めるかが重要な課題となっています。

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2自然災害・冬期問題

目前に迫った大規模地震や、地球温暖化に起因する異常気象などによる災害の激甚化・頻発化、さらに北国ならではの大雪・吹雪視程障害・ツルツル路面・雪崩などの冬期の問題は、北海道に暮らす人々の生活に大きな影響を与えるだけでなく、農林水産業などの生産基盤や経済活動にも大きなリスクとなっています。
事前の防災対策だけでなく、災害発生後に一刻も早い復旧を実行するためのハード、ソフト両面からのインフラ整備が大きな課題となっています。

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3社会資本整備の遅れ・インフラ老朽化

生活や経済活動の基盤として必要であるはずのインフラ整備は全国と比較し立ち後れている一方で、高度経済成長期につくられた多くのインフラが老朽化し、事故や機能低下などのリスクが高まりつつあります。財政問題や担い手不足を解消しながら、インフラ整備の後れを取り戻しつつ、既存インフラの点検や長寿命化、更新に関する抜本的な対策を進めることが喫緊の課題となっています。

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4国際情勢

世界的にも評価される食と観光という資源を持ち、一方で冬期間のエネルギー消費が高い北海道にとって、ロシア・ウクライナ、東アジアなどの国際情勢や新型コロナウイルスに代表される感染症などの国際的問題への対処は重要な課題となっています。また、道北や道東の国境および北方領土隣接地域における地域振興やインフラ整備、国際交流などの課題にも対処していく必要があります。

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2北海道のポテンシャル

:PIXTA

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北海道は食料自給率200%を誇り、我が国最大の食料供給基地となっています。また、雄大な自然の中にある生産空間で育まれた農林水産資源は、国内のみならず世界的な評価も高まりつつあり、今後も世界に通用する北海道ブランドとして、その価値が一層高まっていくことが期待されます。
その実現のためにも、安定的な生産・供給を維持することによる国内食料自給率向上に向け、生産空間やその周辺地方都市での人口減少による担い手不足への対処や、災害に強い生産空間および流通網の構築などが必要です。

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2観光

北海道は、表情豊かな四季を持つ大自然、アイヌ文化や縄文遺跡などの文化資源に加え、近年では雪質の良さを活かしたウィンターリゾートなど固有の観光資源を有し、コロナ禍以前にはインバウンドが300万人を超え、世界的観光地としての地位を確立しつつあります。
今後、世界トップクラスの観光地を形成していくために、自然環境の保全、施設やサービスの付加価値向上とともに、多様な国からの旅行者の安全・安心で速達性の高い移動の実現が求められています。

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3エネルギー

国際的なカーボンニュートラルの流れの中で、再生可能エネルギー(以下、再エネと略記)に注目が集まっていますが、広大な空間を持つ北海道は「再エネの宝庫」と言えます。また再エネは、北海道が進める「ゼロ
カーボン北海道」実現の上で重要な切り札となるだけでなく、日本国内の脱炭素化に大いに貢献できるポテンシャルを有しています。一方で、太陽光や風力など天候に左右される再エネは、電力需給のミスマッチを起こしやすいため、再エネの貯蔵・輸送媒体に関する新たな取組が求められています。

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3私たちのミッション

以上の課題や北海道のポテンシャルを念頭に置いた上で、私たち建設コンサルタントは、ミッションとして以下のゴールを目指します。

  • 北海道のポテンシャルを活かして我が国の発展に 寄与できるようにすること
  • 北海道が我が国の発展に寄与し続けられるように、北海道自体を持続可能にすること
  • 平常時はもとより、想定し得る非常時下でも対応 できるように備えること

これらのゴールの達成には、高度な知見に立脚した検討が必要ですが、私たちエンジニアには、インフラを構築するため長年にわたり蓄積してきた技術と経験があります。しかしながら、従来型のインフラづくりだけで克服できない課題も多くあると考えられるため、昨今その進歩が著しいAIやビッグデータなどの情報技術を一層活用し、長期にわたる検討を可能にする効果的なマネジメント力を高めることも求められます。そして、もう一つ重要なことは、産学官がこれまで以上に強固に連携して課題解決に挑むことと考えます。以降のセクションにおいて展開する、4つのカテゴリーの11テーマ、22項目にわたる提言は、私たちがミッションとして目指すゴールへの達成手段であると同時に、行政や学術機関などインフラ政策に関わりの深いみなさまとの共通理解を深めるための手段でもあるのです。

1.交通分野が先導して実現する
ゼロカーボン北海道

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北海道天塩町

オトンルイ風力発電所( © Photograph_albireo クリエイティブ・
コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際))を改変して作成
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

ゼロカーボン北海道
実現する基盤をつくる

北海道の生産空間では、再エネが製造され、また、その製造に関わっている人々が暮らしています。そのため、生産空間での生活を維持する道路ネットワークや公共交通網を整備する必要があります。

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交通分野が
水素活用の入口をつくる

再エネの未活用電力で水素を製造する一方、水素で走る公共交通車両を開発し、全道各地域でこの車両を導入できれば、交通分野が水素活用の入口をつくることにつながります。

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都市や拠点と生産空間を
安全で速くつなぐ
道路ネットワークをつくる

センサー等で「安全」が確認できる場合に制限速度をアップするようなことは、技術的には不可能ではありません。自動車と道路が一体となってさらに「便利」な道路づくりを進める時代はもうすぐです。

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北海道の広さを克服する
高速移動交通網をつくる

都市部や生産空間、過疎地域などを対象としてオンデマンドな移動手段・物流手段を確立するために、「空飛ぶクルマ」について、その実装を目指した具体的な取組が必要であると考えます。

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クルマを運転しなくても
移動できる公共交通網をつくる

地域内交通と広域高速交通が、鉄道駅やIC、SA、PA、道の駅などでつながった「door to door」で移動可能な公共交通網の整備を、本気で進めるときが来ています。

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2.誰もが自由に移動でき
安心して暮らしていける北海道

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北海道大樹町

3.人・モノ・サービスが行き交い
活力みなぎる世界の北海道

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一般国道230号 無意根大橋

食料供給の安定と拡大を
目指した新たな物流基盤をつくる

目前に迫る物流危機の回避と、季節変動や片荷輸送など物流事業者が抱える従来からの課題を同時に解決するために、あらゆる手段を早期に講じる必要があります。

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世界の北海道としての
魅力を最大化する
新たな観光基盤をつくる

観光客を対象とした交通基盤の整備や、様々なニーズを持つ国内外の観光客一人ひとりに寄り添ったオーダーメイドの北海道観光を提供できる仕組みの構築が必要であると考えます。

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世界標準
新たな都市空間をつくる

都市における交通インフラを人中心に見直していくことや、市街地の道路空間を高度にマネジメントしていくことで、北海道内の都市を世界標準に近づけていくことができるはずです。

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自然災害や老朽化に強い
道路基盤をつくる

リアルタイムモニタリングを行い、そのデータを格納・自動処理する維持管理データプラットフォームを構築するなど、予防保全型道路維持管理に取り組む必要があると考えます。

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災害時や冬期間でも
安全・安心な道路環境をつくる

地震、大雨、大雪、視程障害など自然災害リスクが高まっている昨今では、リスクを事前に察知・想定し、被害を最小限に食い止めるために、あらゆる手段を講じるべきです。

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いかなるときでも
確実に機能する交通基盤をつくる

混迷を極める世界情勢を踏まえると、国境および北方領土隣接地域を「安全・安心」で「高速」で「信頼性の高い」交通網でつなぎ、それらを維持し続けることは、非常に重要な取組であると考えます。

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4.防災・減災・国土強靭化に
対応した安全・安心な北海道

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一般国道336号 浜フンベ覆道

北海道の未来のために 強化すべき主要な交通インフラ

『豊かな未来』に向けた
建設コンサルタントの挑戦

私たち北海道の建設コンサルタントは、ミッションとして目指す『豊かな未来』の一つの形である「交通からみた未来の北海道の姿」の実現に向け、より一層貢献できるよう、私たち自身も変化、成長していきます。

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北海道の未来に向けた 識者からのことば

  • 髙橋 清 教授
    北見工業大学地域未来デザイン工学科

    「交通が描く多様な北海道の姿」

  • 岸 邦宏 教授
    北海道大学大学院工学研究院

    「計画を実現するために」

  • 有村 幹治 教授
    室蘭工業大学大学院工学研究科

    「北海道のトランスフォーメーション」

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重要用語説明

提言で登場する用語の中で、特に重要な用語について説明します。

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