建設コンサルタントが目指す 交通からみた
未来の北海道の姿

北海道美瑛町

以下のセクションにおいて展開する、4つのカテゴリーの11テーマ、22項目にわたる提言は、私たちがミッションとして目指すゴールへの達成手段であると同時に、行政や学術機関などインフラ政策に関わりの深いみなさまとの共通理解を深めるための手段でもあるのです。

1.交通分野が先導して実現する
ゼロカーボン北海道

北海道天塩町

オトンルイ風力発電所( © Photograph_albireo クリエイティブ・
コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際))を改変して作成
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

北海道の沿岸部に立ち並ぶ風車群を見たことがあるでしょうか?
風力発電は北海道を代表する雄大な風景の一つになっています。北海道では現在、風力のほかにも太陽光やバイオマス、地熱などの北海道らしい再エネと広大な森林などの二酸化炭素吸収源を最大限活用し、脱炭素化と経済の活性化や持続可能な地域づくりを同時に進める「ゼロカーボン北海道」の実現に向け様々な取組が進められています。
「ゼロカーボン北海道」では、「地域の脱炭素化」「再エネの最大限の活用」「森林等の二酸化炭素吸収源の確保」「社会システムの脱炭素化」といった4つの柱を実現イメージとして掲げています。しかしながら、不安定な再エネをどのように活用していくのか、脱炭素型ライフスタイルやビジネススタイルへどのように転換していくのか、などに対する具体的な答えは、まだ見つかっていない段階にあると考えられます。
さらに、「ゼロカーボン北海道」の切り札とも言える再エネは、その生産拠点の多くが生産空間(≒過疎地域)に位置していたり、広域に活用したくても本州への送電容量が不足していたり、また、発電に適した季節や時間帯と電気を消費するタイミングが合っていなかったりなどの問題を抱えています。
私たちエンジニアは、それらの問題に対する交通分野からの答えとして、以下の2つの事項を提案します。

ゼロカーボン北海道
実現する基盤をつくる

北海道の生産空間では、再エネが製造され、また、その製造に関わっている人々が暮らしています。そのため、生産空間での生活を維持する道路ネットワークや公共交通網を整備する必要があります。

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交通分野が
水素活用の入口をつくる

再エネの未活用電力で水素を製造する一方、水素で走る公共交通車両を開発し、全道各地域でこの車両を導入できれば、交通分野が水素活用の入口をつくることにつながります。

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このように、交通分野が北海道の未来のエネルギー活用について先導し、それらが突破口となって「ゼロカーボン北海道」が本格的に軌道に乗っていく、そんなシナリオを考えてみました。

北海道の雄大な景色や広さ、それはもちろん大いなる魅力であり多くの恵みを道民・国民にもたらしています。しかしながら、その広さは道民が暮らす上で必要な「移動」の大きな障壁であり、そしてそこに人口減少問題が重くのしかかっています。生産空間では人口減少が加速し、経済の衰退により医療や教育、生活関連サービスの基盤が急速に奪われているのです。地域の生活基盤は弱体化し、地域住民は一層遠くまでの移動を強いられます。その結果、自分一人で移動できる交通手段を持たない子どもや高齢者のいる家庭は、そこで暮らしていくことが困難となり、それがさらなる人口減少を引き起こします。
こうした負のスパイラルから脱却するためには、誰もが自由に移動でき、安心して暮らしていける交通基盤が必要です。
私たちエンジニアは、それらに対する答えとして、以下の3つの事項を提案します。

都市や拠点と生産空間を
安全で速くつなぐ
道路ネットワークをつくる

センサー等で「安全」が確認できる場合に制限速度をアップするようなことは、技術的には不可能ではありません。自動車と道路が一体となってさらに「便利」な道路づくりを進める時代はもうすぐです。

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北海道の広さを克服する
高速移動交通網をつくる

都市部や生産空間、過疎地域などを対象としてオンデマンドな移動手段・物流手段を確立するために、「空飛ぶクルマ」について、その実装を目指した具体的な取組が必要であると考えます。

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クルマを運転しなくても
移動できる公共交通網をつくる

地域内交通(コミュニティ交通・デマンド交通等)と広域高速交通が、鉄道駅やIC、SA、PA、道の駅などでつながった「door to door」で移動可能な公共交通網の整備と、公共交通事業者における問題解決を同時に推し進める必要性について提案します。

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このように、誰もが自由に移動でき安心して暮らしていける北海道における交通網を描き切ることが生産空間での人口定着につながる、そんなシナリオを考えてみました。

2.誰もが自由に移動でき
安心して暮らしていける北海道

北海道大樹町

3.人・モノ・サービスが行き交い
活力みなぎる世界の北海道

一般国道230号 無意根大橋

北海道は、国民・道民に恵みをもたらす生産空間と広域に点在する主要な都市が密接に関係して成り立っていますが、それを持続させるためには、それぞれが経済的に豊かで、かつ、北海道外の人々から見ても魅力的である必要があります。
生産空間には食料供給基地としての機能があり、北海道は食料自給率200%を誇っていますが、地球環境や世界情勢を見る限りその役割は今後さらに大きくなる可能性があります。しかしながらその一方で、トラック輸送力の低下により地域物流が深刻な状況に陥り、北海道で生産される食料の価値を低下させてしまう懸念があります。
また、生産空間には観光地としての機能もあり、「世界の北海道」としてのポテンシャルを有している一方で、季節変動や地域格差といった課題を克服するには至っていません。
主要な都市は、道民が生活していく上で、また、世界中の観光客に楽しんでもらうために便利で魅力的であるべきですが、未だにクルマ中心の都市構造から抜け出せておらず、世界標準から見ると大きく後れをとっています。
私たちエンジニアは、それらに対する答えとして、以下の3つの事項を提案します。

食料供給の安定と拡大を
目指した新たな物流基盤をつくる

目前に迫る物流危機の回避と、季節変動や片荷輸送など物流事業者が抱える従来からの課題を同時に解決するために、あらゆる手段を早期に講じる必要があります。

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世界の北海道としての
魅力を最大化する
新たな観光基盤をつくる

北海道・本州間や広い北海道内を高速で、かつ隅々まで移動できるようにする必要性や、オーダーメイドの観光を提供できる仕組みの構築について提案します。

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世界標準
新たな都市空間をつくる

都市部における道路や交通結節点などの交通インフラを人中心に見直していくことの必要性や、市街地の道路空間を快適に利用でき、その魅力を最大化できるよう道路空間を高度にマネジメントする必要性について提案します。

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このように、交通の側面から、人・モノ・サービスが行き交い活力みなぎる世界の北海道へと向かっていくシナリオを考えてみました。

北海道は、地球温暖化に伴う不安定な天候がもたらす大雨や、地震・津波・火山噴火、さらには大雪や地吹雪、ツルツル路面をもたらす積雪寒冷な気候など、様々な自然災害のリスクにさらされ続けています。
また、北海道の道路インフラは、昭和の高度成長期から平成にかけて建設されたものが多く、50年以上経過したものも少なくありません。そのため、通常の維持管理に加えて、長寿命化や更新などにかかるコストが増大し、将来のインフラ管理に対する不安は尽きない状態です。
さらに、昨今の緊迫したロシア・ウクライナ情勢や東日本大震災クラスの激甚災害、新型コロナウイルス感染症の猛威などを見ても、想像を絶するような有事がいつ北海道を襲ってもおかしくない状況にあると考えられます。
私たちエンジニアは、それらに対する答えとして、以下の3つの事項を提案します。

自然災害や老朽化に強い
道路基盤をつくる

リアルタイムモニタリングを行い、そのデータを格納・自動処理する維持管理データプラットフォームを構築するなど、予防保全型道路維持管理に取り組む必要があると考えます。

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災害時や冬期間でも
安全・安心な道路環境をつくる

地震、大雨、大雪、視程障害など自然災害リスクが高まっている昨今では、リスクを事前に察知・想定し、被害を最小限に食い止めるために、あらゆる手段を講じるべきです。

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いかなるときでも
確実に機能する交通基盤をつくる

混迷を極める世界情勢を踏まえると、国境および北方領土隣接地域を「安全・安心」で「高速」で「信頼性の高い」交通網でつなぎ、それらを維持し続けることは、非常に重要な取組であると考えます。

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このように、北海道、ひいては我が国の危機をいかに乗り越えるかといったシナリオを考えてみました。

4.防災・減災・国土強靭化に
対応した安全・安心な北海道

一般国道336号 浜フンベ覆道

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